TSUKI CAFE（ツキカフェ）

「ツキカフェ？」

買い物から帰る途中、私がそう呟くと、隣にいた母が「今年の３月にね、 新しいお店ができたのよ。入る？」と嬉しそうに微笑んだ。

国分寺台商店街にできたこの店は、名前の通り「月」をコンセプトにしたカフェらしい。その店名に心が揺れ動いたのが自分でもわかる。

中に入ると、お洒落な雰囲気に思わず声が漏れ、居心地の良い空気感に安堵し、私は案内されたテーブルに腰をかけた。

店内の「月」にまつわるいくつものアイテムに心躍らせながら、私はお店のオリジナル御膳を注文することにした。

「ここはヒーリングカフェって言って、数秘術で運命を見てもらうことできるんだから」母は、得意げにそう言って、すこし呆けていた私の鼻を指で突いて、優しく微笑んでくれる。考え事をしていたのがバレたようだ。

「お父さん思い出すわね。よく月を見にお外にお散歩しにいっていたものね」

そう、そうなのだ。幼かった頃を思い出す。父親と手を繋いで、一緒に月夜を見に行って、綺麗だねと小さく漏らすと、必ず頭を撫でて、嬉しそうに笑ってくれた。どこにいても傍で寄り添ってくれた父親は、私にとって月のような大きな存在だった。

「そうだね、私の中で、お母さんは太陽で、お父さんは月だった」

私がそう言うと、母は相変わらず太陽のように微笑む。優しく抱きしめてくれるみたいに。

「ね！月に運勢を聞くってことは、お父さんに聞くってことにはならない？」

「ならないよ。もう、お母さんたら。」

そう言って冗談をいいながらも、その想いに更け、小さく息をつく。貴方を思い出しに、またここに母と来るのもいいだろうか。月はどんな時も、そばにいてくれて、私を見守っていてくれる。

大切なものを思い出しに、私はまたここに来ようと思う。もちろん、太陽のような母を連れて、月の声を聴きに。

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